大工の道具紹介その1

鑿(ノミ)

左市弘(ひだりいちひろ)という鑿

今回は、私が大切にしている道具の一部をご紹介します。

普段使っている鑿は越後の啓寿という鑿で、大変使い勝手の良い鑿ですが
見習い君に穴攫いで使ってもらっていたので、別の鑿(左市弘)を研いでみました。

画像の左市弘という鑿は、大工や建具師の間で「鑿の“左市弘”を知らない人はいない」
とまで言われた大変有名な鑿で、昔から多くの職人たちが憧れた高価な品物です。

残念なことに現在は廃業しており入手困難な状態ですので、以前にも増して
とても高値で取引きされています。

左市弘の鑿は、熟達した技と勘、加えて科学的な裏付けで作られていたそうで
例えば、火入れ後の鋼の組織変化を顕微鏡で確認し、分子構造を克明に記録して
温度管理と材質の変化の関係を調べていたそうです。
そして、その微妙な熱処理と切れ味はどう関係するのかなど、熱心に研究して
いたそうです。

使い良さの究極を目指し機能を追求し続けると、その道具は美しさと優れたバランスを
もたらし、その結果、左市弘の鑿は形の調和が取れた、とても美しいものになったとか。

私の相棒として活躍を続ける左市弘も、長い間、鋭い切れ味と美しさを保ちながら
日々の仕事を助けてくれています。
同じ職人という道を歩く者として、改めて「一芸は道に通ず」であると感じました。
私も、精進を重ねます。

穴攫い(あなさらい)とは?

ところで、穴攫い(あなさらい)という言葉を聞いたことがありますか?
この作業は、簡単に説明しますと穴開け加工後のバリ取りのようなものです。

ひと手間余計にかかりますので、ほとんどの大工さんは行わない作業ですが
私は仕上がりを美しくするために、ひと手間を惜しまず必ず行います
何かを作る時はみな同じでしょうが、ひと手間をかけるか?惜しむか?で
出来上がりに大きな差が生まれます。

そして、それは、”込める思いそのもの”ではないでしょうか。

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